戸建て住宅を建てるとき、たくさんのことで迷いますが、答えが出ない問題のひとつが、「ガスを引くべきか、それともオール電化にするべきか」ではないでしょうか。自分も迷いに迷い、最終的にオール電化にしました。そこに至った過程を残しておきたいと思います。
1.検討事項①:災害への強さ
東日本大震災の時、当時私が住んでいた関東でも計画停電が実施されました。その体験から、災害時を考慮すると、ガスと電気の二重熱源にしておくのがいいんじゃないかと考えました。
一歩進めて家庭用燃料電池・エネファームを導入できれば、ある程度の電気も供給できますから、ガスか電気のどちらかさえ生きていれば、水道が止まらない限りは不自由なく生活できると思います・・・ですが、そこまでの予算はありません。
身の丈に合わせて発電についてはスルーし、ガス単独の機能を災害時に何かで代用できれば、二重熱源にする必要性はぐっと下がると考えました。ガスでできることは、暖を取ることと、お湯を沸かすこと、調理することくらいだと思います。これは防寒用の毛布や、調理用のカセットコンロ、汗拭きシート等を災害対応セットとしてきちんと準備しておくことで、ある程度は対応できると思います。逆に電気が不通になった場合・・・どうしようもないですね^^;懐中電灯や発電機を用意するくらいで、代用方法が思いつきません。
2.検討事項②:経済性
次に、電気とガスとどちらが経済的なのか。
実際に試算するのは大変だったので、webを探してみると、いくつか参考になるページがみつかります。
以下は四国電力グループの四電エナジーサービス(株)が掲載している資料です。
エコキュート | 都市ガス | |
負荷 | 1,296,000kJ/月 | |
消費量 | 120kWh/月 | 36.1㎥/月 |
単位発熱量 | 3,600kJ/kWh | 46,000kJ/㎥ |
効率 | 3 | 78% |
この資料を見るときには注意が必要です。上記は調理器具のエネルギーも含んでいます。また、都市ガスの熱効率が78%となっており、エコジョーズなどの高効率のガス給湯器の値とは異なります。また、熱効率が3となっているエコキュートも放熱ロス等で実働では1.9前後と言われることもあります。(エコキュートを推しているサイトなので仕方ないですが)
そのあたりを踏まえ、片目つぶって評価してみても以下のとおり、エコキュートの方がランニングコストではお得といえます。
さらにはガス管の引き込み費用やガスの基本料金も加味すると(これは電力・ガス自由化で一概には言えませんが)、通常の調理・給湯だけの利用であればオール電化を選ばない手はないと思います。
エコキュート:120kWh×{12.97円/kWh(深夜電力)+2.64円/kWh(エコ賦課金) }= 1,873円/月
都市ガス:36.1㎥×195.73円/㎡(基準料金)×98%(家庭用高効率給湯器契約割引)×80%(熱効率修正)= 5,539円/月
※電力は九州電力の深夜電力単価を、都市ガスは西部ガスの家庭用高効率給湯器契約単価にて試算
3.経済性(大量にお湯を使う場合(床暖房等))
ここまではオール電化の方がお得という話ばかりしてきましたが、床暖房など大量のお湯を使う場合にはそうとも言い切れません。床暖房を設置する場合、オール電化では、通常のエコキュートだけではお湯を賄うことができませんから、床暖房用のエコキュートを入れるとか、ヒートポンプの設置、夜だけでなく、昼にも電力を使ってお湯を沸かすといった対策を考えないといけません。逆にガスの場合には、床暖房も利用するような大量にガスを利用する家庭向けに単価がぐっと下がる(半額以下くらいになることも)プランも用意されています。
他にも、ガス会社が住宅メーカーとタッグを組んで、床暖房の設置費用を割り引くといったキャンペーンが実施されたりもするので、場合によってはガスの引き込み費用も気にならないこともあります。こうなってくると、一概にオール電化がお得とは言いづらくなります。実際にどの程度のガスを利用する予定なのか(床暖房であればどの程度の広さで設置するのかなど)を踏まえて相談することが肝心だと思います。
4.経済性では語れない快適性
ここまで経済性を中心にいろいろと記載してきましたが、やはりガスは実際の炎を使っている優位点があります。
ガス給湯器はエコキュート等と違って貯湯量を気にする必要はありません。使いたいときに使いたいだけお湯をじゃんじゃん使うことができます。
ガスストーブは、エアコンと比べて即効性がありますし、水蒸気を含んでいるので乾燥を避けられます。
我が家ではエアコンだけでなく、優しい暖かさの石油ストーブも併用しています。
ガスコンロも強い火力で鍋を返しながら調理できるので、料理のしがいがあるという人もいると思います。(私は料理はからっきしですが)
たくさんのガスの良さがあるので、経済性では多少分が悪くてもガスをひくという選択があってもいいと思います。
5.最後に
オール電化の前提となっている安い深夜電力は、需要が低い時間帯に使用電力量を分散したいという電力会社のねらいのうえに成り立っています。
これはベース電源として原子力発電所が稼働していることが前提になっています(火力発電の変動ロスを減らす狙いもあるそうです)。現在、動いていない原子力発電所も多く、また日中の太陽光発電の規模も大きくなって接続制限が行われるなど、深夜電力の前提が崩れてきています。一方のガスについても、急激な脱炭素の動きで今後どうなるかわかりません。今後のエネルギー各社(電力・ガス)の動向を注視していく必要があります。
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